「 つばめ ( 玄鳥・乙鳥・燕雀 ) 」
2017-05-05




 まだやってこない
 その姿を待ちわびて
 日なが戸外をながめている
 遙か海を越えてやってくるもの

 数千キロを時速四十キロそこそこで渡ってくるのだという
 その多くが途上で命を果たしてしまうのだという
 そんなに危険を冒してなんの意味がある
 要領ばかりを重んじる人間のぼくはそう思う

 生命を繋ぐのだと彼らは飛翔のかたちで示すのだ
 生命を生きるとは徒労のような飛行を受け入れることだと
 われわれもまたそれぞれにありとあらゆる徒労を重ねるだろう
 彼らのように潔くも敢然とも体も心も露わにできぬまま

 まだやってこない
 春を告げ梅雨の空を切り取るであろうあの美しい姿は
 まだあらわれない
 どうか彼らの徒労を理解したがらぬこの地を見捨てないでくれ
[独り言]
[ざれごと]

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